中国新聞 社説より
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「最後の壁は突破させない」。政府、日銀がきのう実施した東京外国為替市場での円売りドル買い介入の狙いはこうだろう。

 海外市場で1ドル=75円台前半をつけ戦後最高値を更新し、3カ月ぶりの介入の引き金となった。

 自動車や電機の輸出大手企業から「もはや限界」と悲鳴が強まるばかり。5円刻みの節目感もあって、最後の壁としての75円が迫っての決断とみられる。

 介入直後からドル、ユーロに対して一定程度、円安に振れている。介入の効果があったとはいえよう。これが超円高に歯止めをかける確かな一歩となるかどうか、問題はこれからだ。

 8月の為替介入は効果が長続きしなかった。米国、欧州とも金融危機が収まらず、日本円が相対的に安定しているとして円買いに拍車が掛かったままだからである。

 米国では債務上限問題をきっかけに国債の格付けが引き下げられた。景気減速への不安が拭えず、住宅価格の下落が続く。

 ここ数日の際立った円高には、米連邦準備制度理事会(FRB)による追加金融緩和の観測も絡む。事実上のゼロ金利を続ける日本との金利差が縮まれば、安定度での比較がより重視され、円買いに傾くというわけだ。

 オバマ政権がドル安容認による輸出拡大路線を強めている事情も背景にあろう。

 欧州の財政危機と信用不安の広がりをどう収束させるか。欧州連合(EU)は先週やっと、ユーロ圏の包括策合意にこぎ着けた。

 ギリシャ債務の50%削減をはじめ各国主要銀行の資本増強、欧州金融安定化基金(EFSF)の支援規模拡大は大胆な対策と映る。

 ただ危機拡大を阻止しても、安定化には時間がかかりそうだ。

 新興国の成長にもブレーキをかける欧米経済。回復の兆しが見えなければ円高基調は変わるまい。

 実体経済を反映しない投機は規制する必要がある。単独介入では不十分だ。日本政府は今週開かれるG20首脳会合でも協調介入を各国に働きかけるべきではないか。

 またリスク分散の一環として、ドル買いだけでなくユーロ買いも試みてはどうだろう。

 円高で打撃を受ける輸出産業への支援は当然としても、国内総生産(GDP)に占める輸出のウエートがほぼ2割という実態がある。タイの水害でも明らかになったように、企業の海外移転はとっくに広がっている。

 円高のメリットにも目を向けたい。石油、石炭、天然ガスや鉄鉱石など原・燃料は値下がりしているはず。原子力発電への依存度を下げるにも追い風になろう。輸入品を扱う流通業界を含め、消費者に差益を還元してほしい。

 緊急避難としての介入だけでなく、円高を乗り切る抜本策が不可欠だ。日本企業による海外企業の買収を後押しし、技術供与や人材育成での国際協力を促す必要がある。環境や福祉など新分野の成長戦略も具体化が急がれよう。


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文責:永池淳